キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
「む、時間か。これでこの時間の授業を終わる。
それと、誰か荒耶が起きたら後で私のところへ来るように伝えてくれ。日直」
「起立、礼」
ガタガタと周りが煩い、もう少し寝かせろ。
「・・、・耶殿、・・・が・・・てる・・すよ。・・でげす、こりゃ・・・・・すよ」
「え・・これ・・・、やっぱ・こい・・・こす・・・、これ・・番・」
「いや、・・・・ら・・でも・・・んじゃ・・・?」
なんだ? 人の周りでゴチャゴチャと・・・
まて、ちょっとまて、このパターンは何処かで・・・!!
「せい!!」
ゴスッ!!
今度は間に合わなかった。鈍い衝撃が頭に響いた。
Fate/stay night
欠陥魔術師
序章 第二節「仕事の依頼、意外な真実」
SIDE 綾子
キ〜ンコ〜ン カ〜ンコ〜ン
ふ〜やっと終わった。にしても、何でこう昼休み前の授業はどうしてこう眠くなるかねえ。
さて、それじゃそろそろ行こうか。まったくなんであたしがこんなこと、ってこりゃまあ
あたしが今朝無理やり連れてきたせいなんだけど。
「はぁ〜どうしたもんか」
「どうしたんですか? 美綴さん、ため息なんかついて」
「いんや、大したことじゃないんだけどさ。どうもあたしらしくないことしたと言うかこれからすると言うか・・・」
あたしの机の上には二つの弁当箱。
授業が終わってからまだ一分と経っていないが、随分とこいつと睨み合っている気がする。
「その二つのお弁当が原因ですか? ・・・ってまさか貴方・・!」
「地が出てるぞ、遠坂。それと、これは賭けとはまったく関係ないから」
「そ、そうですか。ではそのお弁当、まさか一人で食べるつもりですか?」
「あのね、いくらあたしでもそりゃ無理だって。こりゃ空戒の分だよ」
まあ、部活の後ならいけなくも無いけど、量はともかく片方の弁当の中身は空戒に合わせてあるせいで
やたらと辛い味付けになってるから食えたモンじゃない。
それにしても、普通の料理でもあの泰山の麻婆でも変わらないなんていう馬鹿みたいな舌のやつなんか、たぶんあいつかそれ以上の変人ぐらいだろうな。
「荒耶、君の分、ですか」
「そ、今朝ちょっと無茶言って部活に出したからさ。その侘びに・・・」
「今朝のお侘びなのになんで手作りのお弁当なんですか? まるで最初から渡すつもりだったみたいな」
「っぐ! ま、まあ確かに、最初から無理やりにでも連れて行く予定だったからさ。作ったのはいいけど・・・・」
「渡しにいくのはどうも行きにくい、と」
そうなんだよなあ。そもそも朝錬のときに渡しておけばこんなことにならないで済んだはずなんだよな。
ええい、もう止めだ。こんなのさっさと渡してさっさと帰ってくればいいだけだ。よし。
「う〜決めた、さっさと行って終わらせよう」
「そうですか、それじゃあ頑張ってきてください。応援してますから」
なんてにっこりと笑いやがる。でもその笑みの下にあるのは厭味が見て取れる。
こいつの本性を知ってるからこそ分かるだけで、知らなかったらきっと気が付かないだろう。
まあ、いいや今はこれをさっさと渡してこよう。空戒のやつ、どうせ弁当が無けりゃカロリー使いたくないからって
動いてないんだろうからいるだろう。
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昼休みが始まったばかりということもあってか、皆教室の所々で幾つかのグループを作って弁当を食べている。
まあ、学食を使うやつなんてそんなにいないだろうし比較的何時もどおりか。
約一名、今朝方事故にあった間桐がいないだけかな?
「おや? 誰かに用でも有るんでげすか、美綴殿」
「なあ後藤、あんたさ、昨日何見たの・・・?」
「人には知られたくない秘密の「なあ衛宮、空戒居る?」・・・・自分でふっといて酷いでげす・・・」
酷いといわれようと構わない。あたしはさっさと用事を済ませたいんだ。
ぶつぶつ何かいってる後藤を無視してその隣に居た衛宮に聞いてみる。
「ん? 空戒だったら朝から机であの格好のままだけど」
衛宮の視線の先を見ると、机に突っ伏したままの空戒の姿。
朝からっていうと、多分授業なんてまったく聞いてないんだろうなあいつ。
「流石に起こしたほうが良いでげすかね。葛木殿にも呼ばれてるでげすからな」
「はぁ? 空戒のやつまた呼ばれたの? 今度はなにやったのよ」
「いや、何したかって言われても、さっきも言ったとおり朝からずっと寝てたんだよ」
あ〜い〜つ〜は〜!!
出席日数だけ稼いでも意味無いだろうが!!
「もし、荒耶殿。美綴殿が怒ってるでげすよ。駄目でげす、起きんでげすよ」
後藤がなんとか空戒を起こそうとしているが、空戒のヤツはぴくりとも動かない。
やっぱりちょっとやそっとじゃ起きないか・・・・。
「衛宮、これ借りる。やっぱりこいつを起こすのはさ、これが一番だ」
荷物をそばにあった衛宮の机に置いて、代わりに横にある衛宮の鞄を取る。
軽く振ってみて重さを確認、辞書でも入ってんのか?
まあ、ちょうどいい重さだし・・・。よし、やるか。
「いや、それは幾らなんでもやばいんじゃないのか?」
甘いよ衛宮、こいつがこんなので怪我なんてするたまじゃないのはよく知ってる。
逆に、手加減なんかしたらそれこそ絶対に起きやしない。
「せい!!」
ゴスッ!!
予想よりもかなり鈍い音が響いた。
あ〜流石にこりゃ不味いか?
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SIDE 士郎
「で? 何か言うことはあるか・・・・?」
目の前に修羅が居る。全身から溢れる怒気が陽炎のように立ち昇っている様に見えるのは気のせいか?
とにかくやたらと怒っているのは確かなようで、ここまで怒っている空戒を見るのは一年のときに慎二のヤツが同じ学年の女子の誰かと口論になっているのを空戒が見かけたときだったな。
あの後、空戒のヤツ慎二のヤツを半殺しにして一週間の停学をくらったんだっけな。
「衛宮、さっきから何をそんなに考え込んでいる」
「ん? いや、なんでもない」
「ふむ、まあいいだろう。それともう一度繰り返すが何か言うことは」
「お前がこれから受ける授業を全部まじめに受けるんなら謝るけど」
「無理だ」
ゴンッ!
「っ!! くぁああ・・・」
「即答で無理だ。じゃない!!」
うわ、さっきと同じ部分を俺の鞄(俺の分の弁当と藤ねえの弁当二食分入り)で思いっきりぶん殴りやがった。
相変わらず空戒には容赦が無いというかなんというか。
「大体なあ、授業をまったく聞いてないのは受けてないも同じだろうが!!」
「っ痛〜、いいだろうがそれ位。大体今まで何の注意も無かったんだからそれは注意しなかった葛木が悪いんだろうが」
「子供みたいなこといってんじゃない!!」
あ、そういえばさっき葛木がなんか言ってたな、確か・・・
「そうそう、そういえばさっき葛木殿が荒耶殿に職員室に来るようにとか言ってたでげすよ」
「今朝遅刻したことなら俺も呼ばれると思うが、まさかそんなことで呼び出しも無いだろう。空戒、お前何かしたのか?」
「心当たりがありすぎてどれか分からん」
「そういうことを堂々と言うな!!」
ブンッ!
当たる、そう思った瞬間に荒耶が後ろに身を引いて避ける。
「たわけ、三度もくらうと思うてか」
「甘い!!」
振りぬいた鞄の勢いを殺さずに、手首の返しと腕力にものをいわせて切り返す美綴。
それに対して椅子ごと倒れこみながらかわす荒耶。
しかし空中で鞄の軌道が変化、荒耶に振り下ろされる形で叩きつけられる。
が、荒耶は倒れた勢いを利用して後方へ転がる。どうでもいいが周りにかなり迷惑だと思うぞ。
それと、無駄に高度な動きを見せてくれるのはいいが美綴、それは俺の鞄だということを忘れてないか。
「ちっ!かわしたか」
「殺す気かお前は・・・」
やたらと騒いだもんだから教室中の視線が集まっているが、そんなことこの二人が気にするはずは無いよな、やっぱ。
「あ、あの〜、お二方、お取り込み中申し訳ないんでげすが・・・」
「「なんだ!!」」
「ひっ! そ、そんなに睨まないでほしいでげす。ただ空戒殿は早いとこ職員室に行ったほうがいいんじゃないでげすか?」
む? そういえばそうだったな。気が付けば昼休みも後半分と残っていない。
長い話だった場合は最悪昼飯抜きだ。
「そうだな。空戒、さっさと言って片付けたほうがいいだろう」
「いや、葛木は後でといったのなら別に放課後でも・・・」
「行ってこい・・・」
「・・・・・はい」
なんか、空戒がとても哀れに見えた。
「衛宮、悪いがこれ片付けといてくれ。行ってくる・・・」
「ああ、出来るだけ早く帰ってこいよ」
荒耶が教室から出て行ったが少し疑問が。
「なあ美綴、お前ここに何しに来たんだ?」
「あ・・・忘れてた」
「確か、荒耶殿に用があるとかどうとか」
「ん〜、まあいいや。待ってるの面倒くさいし。あ、衛宮、鞄サンキュ〜。じゃあな」
そいって美綴も教室から出て行く。
なんであの二人がそろうと台風みたいになるんだ。
「あれ? これはさっき美綴殿が持ってきたもんでげすな。」
「む? なんだ、あいつ忘れていったのか」
俺の机の上に見覚えの無い荷物、おそらく美綴の忘れ物だろう包みがあった。
「さてさて、何が入ってるんでげすかね〜」
「いや後藤、止めたほうが・・・」
俺が止めようとするが一歩遅かったらしい。
「弁当でげすな。まさかこれは荒耶殿に渡すために、とかでげすかね」
「空戒に用があるっていってたんならそうだろう」
なら届けなくても空戒に渡しておけばいいだろう。
さて、俺もそろそろ昼飯を・・・・
「・・・・・・・・」
食べようとしたが、そういえばさっきまでその弁当入りの鞄を美綴が振り回してたのを思い出す。
「ん?どうしたでげすか?」
「いや、なんでもない俺たちもさっさと食べよう」
意を決して弁当箱を開ける。
ナンダ、コレハ
弁当箱の中にあったものは、その面積を10分の1以下にまで減らしていた。
だが元は食えるのだから、たとえ面積が小さくなろうとも食えるだろう。
「なあ、後藤」
「なんでげす」
「箸がご飯にささらない場合、どうすればいいと思う?」
「は?」
煎餅よりも固くなったご飯だったものを前に、一体どうすればいいのだろうか?
とりあえず、お茶でも買ってくるか・・・・。
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SIDE 空戒
あ゛〜、くそ。まだ痛い。
さっき綾子に思いっきりどつかれたところがまだズキズキと痛む。
おまけに葛木の呼び出し、となるとやっぱり説教か何かか?
まあそんなことはすぐに分かるか。
「失礼しま〜す、葛木先生いらっしゃいますか」
ざっと職員室の中を見回したところ、葛木の姿が見当たらない。
人を呼び出しておいていないとは、葛木のヤツも藤村といっしょか。
「こっちだ」
「ぬお! い、いつからそこに・・・」
職員室の中にいないはずだ。こいつ、いつの間に俺の後ろに立っていた。
「そんなことはどうでもいい。荒耶、お前に客が来ている。会議室で待ってもらっているが、なにやら大事な話だそうでな。私の授業が始まる前から待っている。早く行くように」
「え? それだけですか?」
「それだけだ。次の授業には遅れるやもしれんと、担当の先生に伝えておこう」
「ありがとうございます」
用件だけ伝えて葛木はさっさと職員室に戻っていった。
それにしても、俺に客? それも学校に直接来るなんてどんなヤツだ?
まあそれも行けば分かるだろう。
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会議室、といっても所詮は学校の会議室なので、使われていない教室に長机とパイプ椅子が並べられているだけの部屋だ。
その中に三人の人物がいる。
一人はもちろん俺こと荒耶空戒。これは俺の客だというので当然だ。
もう一人は目の前に座っている俺の客こと黒い神父服を纏った男、言峰綺礼。
ここまではいい、だが・・・・
「なによ」
「なんでお前まで居るんだ遠坂」
「私が呼んだ、少々厄介なことになってな」
ふん、少々・・・ね。こいつの少々は世間一般で言うと物凄く、であることがほとんどだということを、今までの経験上よく分かっている。
なんせ遠坂経由で、俺にいろいろとバイトと称してヤバイ仕事を持ってくる張本人だからな。
「近々開始される聖杯戦争、それに伴い協会から魔術師が二人ほど送られてきたのだが・・・・」
「だが、なによ」
「昨日、消息を絶った」
「なんですって・・・」
魔術師が、それも聖杯戦争の為に送られてきたのならば、少なくとも教会の中では相当な実力者なのだろう。
それが消息を絶ったということは。
「言峰、その魔術師達はサーヴァントを召喚したのか?」
「うむ、ランサーとキャスターの二体だ」
「ちょっと待って。綺礼アンタなんでそんなこと知ってんのよ!」
「簡単なことだ。その二人が私のところに着た後に消息を絶ったのだからな」
「まさかアンタが襲ったんじゃないでしょうねえ!!」
やたらと強引な推測だが、その可能性は否定できないな。なんせ言峰だから。
「まったく、少し落ち着け我が娘よ」
「誰が、誰の娘よ!!」
「ふ、以前、第四回聖杯戦争が始まる前のことだがな。
お前の父親にしてわが師、遠坂時臣に『もし私の身に何かあったときは娘を頼む』と
酒を酌み交わしながら言われてな。ちなみにその時はお互いに一升は飲んでいたか」
「な! そ、それじゃまさか・・・」
「親権は私に移譲されている。つまり、私は正真証明お前の父だ。言っていなかったか?」
さらっととんでもない事をいったが俺には関係がない。
そんなことよりも。
「話を元に戻すぞ。言峰、お前でないとしたら可能性は三つだ。
一つ目は、その魔術師を上回った魔術師ないし何者かに襲撃された。
二つ目は、まあ、ありえんだろうが逃げ出した。もしくは連絡を怠っている。
そして三つ目は・・・・」
「サーヴァントによる殺害されたか、ということだ」
「ふん、要するにその魔術師及びサーヴァントの捜索といったところか」
「そういうことになる。本来ならばこのようなことは出来んのだが、幸いまだ聖杯戦争は始まっていないのでな。
やり方は幾らでもある」
要はまだ始まってもいないのに好き勝手やられては困るから、必要に応じて拘束、もしくは抹殺しろ、ということか。
「分かった。だが相手の情報は何か無いのか。何もなくとも構わんが、それだと少し時間がかかるぞ」
「それならば問題は無い。既に用意してある」
そう言って、懐からかなり厚みのある書類を取り出す言峰。
どうやって懐から出したんだよ。
ざっと確認してみたが、絶対に残りの休み時間では読み終わらないだろう。とりあえず書類に目を通すか。
「なあ、言峰。これって、お前が調べたのか?」
「いや、私の古い知り合いに頼んだところ、彼女のところの所員が調べてくれてな」
「所員? まさか堅気の人間を頼ったか」
「いや、詳しくは言えんが彼女も魔術師だ。そこの所員ということは少なくとも堅気の人間ではなかろう」
まあ確かに、ここまで一個人を調べ上げれりゃまともな人間じゃないだろうよ。
なんで生まれた病院やら、今まで罹った病気やら怪我やら、仕舞いにはつい三日前のことまで調べつくされているんだよ。・・・・・・・絶対敵にしたくねえ。
「ふむ、何時から始めればいい?」
「出来るなら今すぐにでも・・・・出来るか?」
「了解した、報酬はいつもどうり現金で。あと、教師連中への説明はお前に頼む・・・・・遠坂、何時まで放心している」
「ふえ? あ、あれ? 私どうしたの」
こりゃ駄目だな、完全に復帰するまで時間がかかりそうだ。
「言峰、遠坂に説明を頼む。俺は早速行かせて貰う」
「うむ、吉報を待っているぞ」
面倒なことになりそうだ。
そう思いながらも会議室を後にする。背後から絶叫が聞こえたような気がするが無視だ。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
SIDE ?
「くそっ! くそっ! くそ! なんなんだ、なんなんだこいつは!!
サーヴァントのくせに、この優秀な魔術師である私よりも優れているだと!! ふざけるな!!」
召喚されてからというもの、常にこの調子で怒鳴り続けている。
私はキャスターのサーヴァントとして召喚されたのだから魔術に長けるのは当たり前だし、そもそもサーヴァントがマスターよりも弱くては話にならないというのに。
その上、魔力供給はおろか令呪を使ってまで私の力を抑えるなど、愚かとしか言いようが無い。
もし他のマスターが襲ってきた場合はどうするつもりなのか。
「マスター、先日の代行者に連絡を取らなくてもよろしいのですか?」
「煩い!! お前は私が言いというまで何も話すな!!」
「っ! ・・・・はい」
まただ。代行者に連絡を取っていれば他のマスターの情報が得やすくなるというのに。
このマスターは確かに魔力だけならば優れているかもしれないが、それだけでしかない小物なのだろう。
「おい! さっさと次の獲物を狩りに行くぞ!!」
「・・・・・・・・・」
「貴様っ!! 返事もせんとは! このクズが!」
「っ!! 申し訳、ありま、せん」
裏切りの魔女といわれた私にはこのような扱いがふさわしいのかもしれない。でも、願わくば開放してほしい。
例えそれが死という名の終わりであったとしても、少なくとも私にとっては救いなのだから。
誰もいなくなった裏路地には、主をなくした衣服が無数に散らばっていた。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
SIDE 空戒
「早退します、理由は後で葛木先生にでも聞いてください」
「へ? なんで?」
まあ、そりゃあ授業中の教室に入ってきて第一声がこれじゃ、そんな反応も仕方が無いか。
だが、説明する暇は無い。時間が無いのだ。
「あ、おい空戒。早退するんだったらこれ持っていけ」
「ん? なんだ、これは・・・」
「美綴が置いていったんだが、多分お前の弁当だ」
お〜、とか、きゃ〜とか。授業中だから囁く様な小さな声だったが、三十人程集まればよく聞こえる。
「衛宮、とりあえず礼を言っておくが、頼むから今度から発言はTPOをわきまえてしてくれ」
「む? なんだかよく分からんが、了解した」
絶対分かってないだろうがもういい、こいつはこういうヤツだ。
まったく、それにしてもなんで高が弁当一つで騒がれねばならんのか、まったく分からん。
「それじゃ、帰りますんで」
「え? え? ちょ、ちょっと待って荒耶君。あなた、わたしの授業後一回でも休むと留年なんだけど・・・」
「さっきも言いましたが、その理由は葛木先生にでも聞いてください。今頃神父といっしょに話してるでしょうから」
「ああ! ちょっと〜!!」
なおも追いすがってくる藤村を振り切って教室を後にする。
それにしても、なんでこう間が悪い。どうして今日に限って英語が午後に回るんだ。
まあ俺が間桐のヤツを轢いたのが原因なんだが、そんなのはこの際どうでもいい。
やっぱりあの程度で怪我をする間桐のワカメが悪い、そうに決まってる。
ついでに藤村もなんでこう帰ってくるタイミングが悪いんだ。
こうなったら言峰のヤツがどんな理由を作ってくれるかだな。
頼むぞ言峰、俺の進級はお前に掛かっている。
今まで一度もお前を信じたことなぞ無いが、本気で頼むぞ言峰。
『任せておくがいい』
・・・・・・・・くそっ! なんか嫌な感じがしやがる。
赤くて紅くて赫い何かを背景にした言峰が、とても厭な笑顔を浮かべている様が目に浮かんだ。
それを振り切るために俺は全速力で学校を抜け出した。
拳鬼さんから「Fate/stay night 欠陥魔術師」の序章の4を頂きました。
今回は、「荒耶空戒、言峰綺礼に依頼される」とでもいったところでしょうか。
まぁ、言うべき事は一つだけです。『遠坂凛=言峰凛!?』
異常です。違う、以上です。
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