少女が引金を引いて銃弾が青那の元へと届くまで、僅かに瞬き一回分の時間。

その一瞬の間に、青那は異能の力を発現させる。青那の瞳が蒼く輝き、目の前に氷の壁が現れる。

空気中の水分を“凍結”して作られたそれは、青那の目論見どおり飛来する弾丸の進路を妨げる。

突如として現れた障害物に弾丸は、その運動エネルギーを全て叩き込み静止する。

次の瞬間、弾丸が爆発した。

「な――!?」

内部から破裂した弾丸は、炎と衝撃波を撒き散らす。限界以上の衝撃に耐え切れず、氷の壁が砕け散る。

砕かれた氷の破片は刃となり、青那へと襲い掛かる。

慌てて横へ跳ぶが、幾つかが身体に掠め血が流れる。痛みに顔をしかめるが、傷を確認している暇は無かった。

青那へ向かって先ほどと同じように飛んでくる弾丸が一つ。

着地した瞬間なので体勢が悪い。避けられない。

青那は先ほどと同じように氷の壁を作り出す。氷の壁にぶつかる弾丸。再び爆発。

「くぅっ……!」

襲い掛かる氷の刃に、青那は更なる傷を負う。

痛みを堪え、その場から跳び退る。一瞬前まで青那がいた場所へと着弾。爆発。

砕かれたコンクリートと爆風を氷の壁でやり過ごす。

床に着地すると同時に氷の壁を前方に展開。続けざまに襲い掛かる銃弾を防ぐ。

爆発。砕かれる氷。そしてその破片で傷つく青那。

(くっ…!このままじゃ……)

またも破壊される氷の壁。少女の弾丸に終わりは見えない。

次から次へと弾丸が青那へ襲い掛かる。それを氷の壁でなんとか防ぐが、その度に破片で身体が傷つく。

すでに青那は全身が血塗れの状態だった。

全身につけられた傷の一つ一つは小さく、出血も少ない。しかし、余りにその数が多かった。

傷の数は百を超え、青那の身体から出た血の量もかなりのものだ。

おまけに激しい運動のせいで、傷口からはなおも出血が続いている。

このままでは青那が出血多量で動けなくなるもの時間の問題だった。

「っ!」

相手もそれを分かっているのだろう。勝負を決めようとはせずに、ただ正確に青那を狙ってくる。

次々と飛来する弾丸。それを必死で回避し、防ぐ。

(一体どれだけ弾を持ってるんだ!?)

弾切れを待つ青那を嘲笑うかのように、弾丸は休みなく飛んでくる。

少女があとどれくらい弾丸を持っているのかは分からない。だが少なくとも青那の体力が尽きるより早いという事は無いだろう。

それは最初からずっと変わらぬペースで打ち込まれる弾丸からも明らかだった。

それが分かっていても、しかし青那には現状を打破する手段が無かった。

少しでも動きを止めれば、その瞬間に機械のような精密射撃で身体を貫かれるだろう。

あんな凶悪な弾丸に貫かれれば、人間の身体など簡単に四散してしまう。

正確無比な射撃と爆発する弾丸、これらから逃れるだけで青那には精一杯だった。

必死に身体を動かし、能力を行使する。それで何とか致命傷を避けていた。

しかし、それにも限界が訪れた。

「うあっ!!」

防ぎそこなった弾丸が青那の左肩に掠る。その衝撃で爆発した弾丸は、青那の左肩の一部を吹き飛ばした。

衝撃と痛みで一瞬動きが止まる。それはこの場において、大きすぎる隙だった。

動きの止まった青那へと、2発の弾丸が迫る。その狙いは頭と心臓。

今から動いたのでは回避は不可能。氷の壁で防ごうにも、時間差をおいて発射された弾丸を防ぎきる事は出来ない。

1発目に壁を砕かれ、2発目は確実に無防備な青那へと突き刺さるだろう。

そうと分かっていても、しかし青那に他の選択肢は存在しない。今まで以上に意識を研ぎ澄ませ、能力を発現させる。

青那の意に従い現れる氷の壁。それは込められた意識の違いか、先程までよりもかなり大きい。

しかし、その巨大な壁も主を守りきる事は叶わなかった。

どんなに大きくても所詮は氷とでも言うように、弾丸は氷の壁を粉砕する。

その際に一つの弾丸は爆散した。しかし、弾丸はもう一つ残っている。

砕け散った氷の向こう側には、先と同じ格好のまま立ち尽くす青那。

残った弾丸は、その青那の胸へと吸い込まれ――、爆発した。

 


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