Fate/stay night

欠陥魔術師

第一章 第二節 「開戦、聖杯戦争」

 

 

 



 

 

 

 

 

 

夜の街はある程度の規模になれば昼の街とは違う喧騒がある。

最近は通り魔や殺人鬼、影の様な獣に襲われるという事件。

果ては娘に手を出した奴はいねがぁ! などと叫びながら大型バイクを駆り若い男に襲いかる神父など、

様々な事件や噂が立て続けに起きているせいか、新都の夜は普段と比べて随分と静かになっている。

 

しかし、此処は普段からあまり人が寄り付くことはない。

 

新都の中心部から離れた郊外にある教会その前に一台の車、それもおおよそ日本の公道を走るには向かない

軍用車ハマーが停まっている。

運転席に座っているのは二十歳前後の男性、助手席には十代半ばの少女が、

後部座席には少女と同じ年代と思われる男女が三人座っている。

その内の一人は何故か白銀の甲冑を身に纏っていた。

その内の少年――衛宮士郎――が沈黙に耐えられなくなったのか、運転席の男性――荒耶空戒――に話し掛ける。

「なあ荒耶、聞いてもいいか」

「…答えられることならな」

若干の間の後、さも面倒くさいと言わんばかりの声で返す。

「今更だけど、お前も魔術師だったのか?」

「お前も、と言われと色々と語弊があるがな。例えば遠坂を一人前の魔術師とするなら、

 お前は半人前見習い補佐控えな魔術師、俺はお前にも劣る魔術を使えない欠陥品だ」

「ものすごく莫迦にされた気分だ」

自分の評価を聞いて落ち込むべきか、そんな自分よりも更に低い評価を己に下す空戒に何と言って良いか。

そんなことを考えていると、横に座っている少女――遠坂凛―― が口をはさんでくる 。

「そんな欠陥品を相手に悩んだところでどうにもならないわよ」

「いや、でも遠坂……」

「大体、魔術師としては欠陥品だ、とか言いながらそいつは魔術が効かない妙な体質と妙な格闘技で何人もの魔術師を

 『狩って』きてるのよ! それこそ協会の執行者並みに!」

「執行者といえば昔、養父と人形使いを訪ねた時に戦ったことがあったな」

先ほどまでの面倒くさそうな雰囲気と違い、何か楽しいことでも話す口調で空戒が会話に加わってくる。

「あ、あんたよく無事だったわね」

「そうでもない。両足を叩っ斬られたし、肋骨を折られた上に内蔵をやられた。

 最近またそいつと遭ったが、今度は右腕をやられた。正直に言って、今も動かないぞ」

 

沈黙。

 

誰かが息を呑む。

後部座席の三人が一斉に運転席を見る。座っているのは荒耶空戒、しかしよく見るとハンドルを握っていない。

では誰が運転しているのか?

後部座席の三人。

衛宮士郎、遠坂凛の二人は勿論、三人目の甲冑の女性――セイバ――も車の運転など出来ない。

では、誰が?

「今頃気付くとは、そんなに夢中になる程乳繰り合ってたんですか、義姉さん?」

答えは簡単だ。

最も運転席に近い助手席に座る少女――カレン・K・オルテンシア――しか居ない。

「ちょっと! まさかこの車を運転してるのって!?」

「安心しろ、ギアチェンジとハンドルを任せているだけで他は俺がしている。」

「安心出来るかぁ!!」

深夜の冬木市に悲痛な叫びが響き渡った

 

 

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