ずっと、暗くて狭い場所にいた。
自分の姿を見る事すら出来ず、聞こえるのはただ自身の鼓動だけ。
そんな場所に、ずっと一人でいた。
どれだけの間、そこにいたのか。
まるで変化というものが無いその場所で、時間の流れなど解るはずも無く。
一瞬に等しい永遠と、永遠に近い一瞬を、その闇の中で生きてきた。
しかし、世界に永遠に続くものなどあろうはずも無く。
変化は唐突で、劇的だった。
闇に一筋の銀光が走り、次の瞬間には光に追いやられていた。
生まれてはじめて見る光。その暴力的なまでのまぶしさに、思わず目を瞑る。
「大丈夫?」
生まれてはじめて聞く、己の鼓動以外の音。
それに反応し、眩しさも忘れて目を開ける。途端に飛び込んでくる光に再び目を焼かれる。
反射的に目を瞑りそうになるが、何とか堪えて音のした方を見る。
そこに立っていた人を見た瞬間――、呼吸が止まった。
その紅い瞳は、どこまでも澄んでいて。
その銀の髪は、まるで光を束ねたかのようで。
その手に持つ刃は、何よりも綺麗で。
その美しさに、呼吸すらも忘れてただただ見入る。
「大丈夫?怪我は無い?」
微動だにしない自分に不安になったのか、その人は心配そうな顔で声をかけてくる。
その人にそんな顔をさせるのが嫌で、首を何度も縦に振る。
それを見て、その人は、
「そっか、よかった」
そう言って、微笑った。
その笑顔はすごく綺麗で、すごく優しい感じがした。
だから、
「さ、僕と行こう?」
そう言われて差し出された手を、自分でも意識しないくらい自然に掴んでいた。
そして―――。