注1・この話は本編と何ら関係ないかもしれません

 

 



Fate/stay night

欠陥魔術師 害伝

外道マーボー誕生 原因編

 



 

きっかけは何てことはない。

仕事を終えて言峰の教会で報酬を貰い、ついでに新しく娘ーしかも実子ーが増えた、とやたらハイになった言峰に食事をたかり

久しぶりに調理されたものを食べ終えたころの言峰の娘ーカレンーの告白から始まった。

「味覚がない?」

先程まで同じテーブルで食事を取っていた相手からの突然の告白。

流石にそれには他の二人、言峰とギルガメッシュも若干驚いたようで、食後のお茶を呑む手も止まる。

「正確には、極端にカラいか甘くないと味が判らないだけですが」

「ふむ、では試しにこの茶を呑んでみるがよい」

そう言って俺のマグカップ(紅茶1:ブランデー9)を、ずいっと差し出すギルガメッシュ。

因みにブランデーは樽出しのモノで、アルコール度数60度を超えている。当然香りも相当強い。

「まさかとは思いますが、アルコールを呑ませようとしていませんか?」
             ワタシ
「仮にも義姉である我を疑うのか?」

あくまでも只の紅茶だと言わんばかりに堂々とカップを差し出す義姉。

それを無言で見つめる義妹。

それを何故か楽しそうに眺めている父親。

呑もうが呑むまいがどちらでもいいがこのままでは千日手になりそうだ。

しかし、代わりの酒でも持ってくるかと俺が席を立とうとすると状況が動いた。

「一応、念の為聞いておきます、そのマグカップの中身は本当に只の紅茶ですね?」
                   ワタシ
「くどい、只の紅茶だ。この我が保証してやる。まあ、随分と冷めているがな」

「では、一息に飲み干しましょう。ただ、中身が私の想像のとおりなら、確実に急性アルコール中毒になり、
 会ったばかりの父と義姉に別れを告げる間もなく主の下に召されるでしょうね」

それはもう、今日見た中で一番イイ顔で言い切った。

ブラフか。

普通ならば誰も掛かりはしないような幼稚なもの。それが見抜けないような未熟者もお人好しもこの場にはいない。

だが、忘れてはならないことが二つ。

この場にいるのは基本的に甘い女と娘馬鹿な父親だということ。

その証拠に笑顔でマグカップに手を伸ばすカレンを見てかなり動揺する二人。

今更慌てるのならさっさと止めておけば良かったな。

さて、どうするか。

「冷めた茶など不味かろう。今新しいものを用意しよう」

「いえ、冷めたお茶も嫌いではありませんから」
   アマ
この女、人が作った妥協案をはねのけやがった。

尚も続くかと思ったその時、

「ええい! 埒があかん! っんぐ…ん…っぷはぁ〜!」

何時までも続くことに堪えきれなかったギルガメッシュが、一気にマグカップの中身を飲み干し勢い良く立ち上がる。

「興がしょれら、わらひはさゃきにひゃふあ〜」

椅子から立った拍子にアルコールが回ったのか、ドサッとその場に倒れ込んだ。

「……ふっ、他愛ないですね」

カレン・オルテンシア。修道服を着たあくいのてんし。

間違いない、こいつは言峰綺礼の娘だ。

「荒耶、ギルガメッシュを頼む」

「バケツに水汲んでぶっかければいいのか?」

                     ヒューマン
「そんな事をしてみろ、ぶち殺すぞ人間!」

 

怖っ!

ヤバい、今のこいつはナチの残党ぐらいは娘の忘れ物を学校に届けるついでに纖滅しかねん。

「了解、壊れ物でも扱うように丁重に搬送しよう」

「わかれば宜しい。だが、いくら私の娘が魅力的だからといって襲うなよ」

「誰が襲うか!」

「貴様! 私の娘が可愛くないと言うのか!?

「可愛くない訳でわないが、コイツはどちらかというと綺麗……っ!?」

一瞬、酔いつぶれたギルガメッシュの寝顔に目をやると、凄まじい殺気を感じてとっさに体を捻る。

半瞬前まで頭が在った位置に空気の塊が通り過ぎるような衝撃。僅かに遅れてパァン! という何か爆ぜるような音が耳の奥に響く。

「荒耶空戒、やはり貴様、娘を襲うつもりだったか!
                                                       
目の前に修羅が……否、“娘に手を出す不届き者、須く滅っする”そんな信念を抱く一人の父親がいた。

彼の者に理屈は通用しない。

そんなヤツの目の前にいるのは今まさに娘に手を出そうとする男、すなわち俺。

自分で運ばせようとしたくせに勝手に勘違いして勝手ヒートアップする。

正直にいって勘弁してもらいたいが、今のヤツに何を言っても無駄だろう。唯一止められる人物は……、

「ふふっ……」

ニヤニヤして見てやがる。最悪だ……。

こうなったら選択肢は二つ。

一つは、カレンを人質にする。……いや、かえって状況が悪化するか。

ならば!

「とりあえず、言っておくことがある」

「よかろう。私も神父の端くれ、遺言ならば聞いてやろう」

「娘さんを下さい」

「いい度胸だ、表へ出ろ! 欠陥小僧!」

「こい、ジューダスプリースト!」

己が武力をもって制圧する!

 

 

「退屈はしないですみそうですね、ふふふ…」
                                              あくいのてんし
表から響く人体が奏でる筈がない音をBGMに微笑む少女。彼女の名は、カレン・オルテンシア。

彼女が原因で、二人の男の手により、ある中華料理屋が道を外れることになるがそれはまた違う話。

 


拳鬼さんから「Fate/stay night 欠陥魔術師」の害伝を頂きました。

基本的に、本編以外ではほぼ確実に言峰パパが登場していますね。

ああ、ギルもでしょうか。

それだけ作者に愛されているということでしょう。

蒼夜もこの二人は大好きです。

 

 

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