泰山店内その中のテーブルの一つ、そこにはこの後に何が起こるのかを知らない男女3人がいた。
注文のことで騒ぎ立てる赤い服の少女、遠坂凛。
それを軽くいなしている修道服の少女、カレン。
その二人に巻き込まれないように窓の外をぼんやりと見ている少年、衛宮士郎。
昼食時だというのに店内に他の客の姿が無いのが幸いだったのかそうでないのか。
少なくとも周囲の視線を感じることがない分士郎にとっては幸いしたのだろう。
だが、周囲に人がいないのをいいことに凛のボルテージは上がったまま下がらなかった。
注文の内容がカレンの「いつものを三つ」だけだったことに妙に恐怖を煽られたからかもしれないが。
ここ、泰山の料理はとにかく辛いので有名だ。
その中でもカレンや言峰綺礼、荒耶空戒が食べるモノには、辛いという文字にカライとツライが同時に存在する。
おそらく、カレンの言ういつものとはそれのことだろう。
だからこそ凛は吠え、士郎は逃避している。これから来る地獄の恐怖を僅かでも和らげる為に。
Fate/stay night
欠陥魔術師(仮)
外伝 「父の戦い」 其の二
凛「ちょっと待ちなさい! いつものって何!! まさかアレじゃないでしょうね!!」
カ「義姉さんが言うアレが何かわかりませんがおそらく」
凛「店長!! 今の注文取消しよ!!」
取り消しと叫んではみるものの、既に具材を刻む音が聞こえてくる。
既に調理に入ってしまっているのだろう。そして時折見える店長の目が明らかに常軌を逸している。
士「いや、多分もう聞こえてないんじゃないか」
恐ろしいことについ今しがたまで聞こえていた音が中華鍋で炒める音に変わっている。
この分ではあといくらもしないでテーブルの上にはアレが置かれるだろう。
凛「あ〜もう! わたしはあんなの絶対に食べないからね!!」
カ「私や父や空戒さんは普通に食べれますが?」
凛「あんな奇人変人妖怪変化どもと一緒にすんな!!」
そのとき、士郎が何気なく見ていた窓の外に、気のせいかもしれないが一直線に泰山を目指して砂煙が舞っているのが見えた。
士「あのさ」
カ「往生際の悪い。大体一度注文したもののキャンセルなんてこの店で出来るとでも?」
士「取り込み中悪いんだけどさ」
凛「うっさいわね! 往生際が悪かろうがなんだろうがあんなのを食べるよりはましよ!!」
士「なあったら!!」
凛「煩いわね!! なんなのよ!!」
士「あれってなんだ?」
凛カ「「はい?」」
三人が目を向けた先にはもう1キロも離れていないところに上がる砂煙。
その原因を作っているであろう棺桶と十字架を引きずったハーレーとそれに跨ったカソックを着た男。
その後を追う赤色灯を点灯しながら走る白バイにのる男女。しかしどちらもノーヘルで明らかに交機の人間ではない。
その二組のバイクに乗った三人の男女には全員見覚えがあった。
カ「父に義姉に空戒さんですね」
凛「あいつら、こんな真昼間から何をしてるのよ全く」
士「何か言ってないか、あの人」
カ「確かに何か言っていますね。ここまで聞こえると言うことはかなり大きい声で叫んでいますね」
凛「何でそんな恥ずかしいまねしてんのよ。ていうか警察はどうしたのよ警察は?」
あんだけ目立てば普通パトカーとかすごいことになってるでしょうが」
カ「おそらく、それら全て撃破し突破してきたのでしょう。義姉と空戒さんの乗っているバイクが何よりの証拠です」
言「それ・・私・娘に・・く・!!」
士「ん? 何かはっきりと聞こえてきたぞ」
凛「それ、私、娘? 何を言ってるのよあいつ」
カ「なるほど・・・」
はっきりと聞こえたのはカレンのみであり他の二人はまだ聞き取れていないのだろう。
そして聞き取れたカレンの顔にとてつもなく邪悪な笑みが浮かんだのに二人は気付けなかった。
カ「二人とも、ちょっと窓の前までお願いします。出来るだけ外に見える位置まで。
義姉さん、少し衛宮さんの方によってください。衛宮さんは義姉さんのほうを向いてください」
士凛「「?」」
何のことか分からない二人はとりあえず言われたままに移動し、お互いに向き合う格好となる。
カ「あと3、2、1……えい」
ドンっ!! と凛の背に体当たりをする様に突き飛ばし、自らは素早く士郎の後ろに回りこみ抱きつく。
言「それ以上私の娘に近づくな!!」
続け!
拳鬼さんから、「Fate/stay night 欠陥魔術師」の外伝を頂きました。
先日頂いた暇つぶしSSの続きです。
例によって本編とは何ら関係のないことを、ここに明記しておきます。
今回は、ようやく言峰が登場したところで時間切れとなってしまいました。
言峰パパの活躍は、其の三に期待しましょう(笑)。
待て、次号!
ちなみに、拳鬼さんへの感想は掲示板かWEB拍手へどうぞ。
返事が返せるかどうかは分かりませんが、本人とても喜んでいらっしゃいました。
感想は作家さんの原動力です。一言でもいいので、是非是非お送りください。